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大阪地方裁判所 昭和56年(ワ)7317号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

原告Xは、被告Y1に対し、貸金等合計七四六万円余の債権があると主張してその支払を求め、また、被告Y2に対し、Y2はY1の右債務のうち五〇〇万円の貸金についてその保証をしたとしてその支払を求めたところ、YらはY1のXに対する反対債権による相殺の抗弁を提出した。本判決は、XのYらに対する大部分の債権の存在を認め、Yら主張の相殺の抗弁は権利の濫用であつて無効であるとして、Xの請求の大部分を認容した。

【判旨】

二抗弁について判断する。

原告に対し、国際電々が(イ)債権を、誠徳が(ロ)債権を有していたこと、国際電々の代理人宮崎繁が、原告に対し、昭和五七年七月八日到達の内容証明郵便をもつて(イ)債権を被告榮一に譲渡した旨の、誠徳が、原告に対し、同月一〇日到達の内容証明郵便をもつて(ロ)債権を被告榮一に譲渡した旨の各通知をしたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、国際電々が昭和五七年七月六日被告榮一に(イ)債権を、誠徳が同月九日被告榮一に(ロ)債権をそれぞれ譲渡したことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。そして、被告榮一が、同月一七日の本件口頭弁論期日において、右(イ)、(ロ)債権を自働債権として別紙記載のとおり本訴債権と対当額につき相殺の意思表示をしたことは記録上明らかである。

三再抗弁について判断する。

<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

1 被告榮一は、本件口頭弁論期日に殆んど毎回傍聴していたが(この事実は、当裁判所に顕著である。)、請求原因事実についての原告側の立証がすべて終つた後である昭和五七年七月一日ころ、国際電々へ赴き、滞納料金の督促、取立等の事務を処理している第三課々長補佐宮崎繁に対し、国際電々が原告に対して有する(イ)債権を譲渡してくれるなら、同被告が原告に対して支払うべき金の一部を国際電々に回し、三〇万円を支払う旨申し入れた。国際電々は、振出手形の不渡を出した直後の昭和五五年七月一一日に解散決議をして清算手続に入つた原告の委任によりその任意整理事務を処理していた北尻弁護士から債権の届出をするよう連絡を受け、同年一〇月ころ(イ)債権の届出をしていたが、その後なんの返答もなかつたところから、(イ)債権は最早回収の見込みがないと判断していたので、僅かでも回収することができればこれに如くはないと考え、遅延損害金を含まない滞納通話料元本額だけで五一一万〇一一五円に上る(イ)債権を、被告榮一の申出どおり、僅か三〇万円の支払を受けて同被告に譲渡した。

2 被告榮一は、更に昭和五七年七月初ごろ誠徳へ赴き、同被告がかねて原告の経理担当取締役であつた当時交渉のあつた誠徳の代表取締役野垣正一に対し、同被告が原告に対して支払うべき数百万円の金のうちから一三五万円を誠徳に回して支払うから(ロ)債権を譲渡してほしい旨申し入れた。野垣は、昭和五五年七月ころ前記北尻弁護士から原告に対する債権の届出をするよう連絡を受けて(ロ)債権を届け出ていたが、その後昭和五六年二月ごろ整理の経過について一回報告があつたほかなんの連絡もなく、(ロ)債権の回収を半ば諦めていたので、被告榮一の申出を渡りに船とこれに応ずることとした。ところが、被告榮一は、その後国際電々に支払わなければならない分もあるとして、当初の申出額を一挙に八万円減額し、しかも、右八万円の支払時期は、同被告と原告間の本件訴訟が終結した時と定め、更に、本件訴訟において、(ロ)債権を自働債権とする相殺権を行使することができないときは債権譲渡契約を解除することができる旨の特約を付するよう申し入れた。これに対し、誠徳は、幾らかでも債権を回収できればよいとの考えのもとに被告榮一の申入れを承諾し、その旨の覚書を取り交わしたうえ、前記のとおり(ロ)債権の譲渡が行われた。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

右認定の事実によれば、被告榮一は、本件訴訟の終局近く敗訴が必至となつた段階において、もつぱら本訴請求にかかる債務の履行を免れるため本訴債権に対する相殺の自働債権として利用する目的をもつて、国際電々及び誠徳が原告に対して有する実質上無価値に等しい(イ)、(ロ)債権を、(イ)債権については元本額五一一万〇一一五円の僅か六パーセントにも満たない代金額三〇万円で、(ロ)債権についても前同様元本額一三五万円の六パーセントに満たない代金額八万円で譲り受けたものであつて(しかも、(ロ)債権の譲受代金については、本件訴訟において右債権が相殺の自働債権として役立つた後にこれを支払う旨の覚書まで取り交わしている。)、債務者として著しく信義に反する態度といわざるを得ず、このような譲受債権を自働債権としてした相殺は、信義衡平の観念に照らし、権利の濫用として到底許されないものと認めるのが相当である。したがつて、再抗弁は理由がある。

(島田禮介)

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